カセットコンロ哀歌

作者:青葉桂都

●蘇る炎
 冬に向かって気温も下がり、温かいものが欲しくなる季節。
 北海道のとある街で事件が起ころうとしていた。
 歓楽街の端に、鍋料理の看板を掲げた建物があった。 もっとも、今はもう営業していない店だ。
 閉店したのがいつだったかはわからないが、鍋物を売りにしていたその店の一角に、一台のカセットコンロが置かれていた。
 ボロボロのコンロはおそらく壊れて使い物にならない。だから閉店時に回収されず放置されたのだろう。
 どこから入り込んだのか、そこに侵入者が現れた。
 握り拳大の宝石に、機械の手足が生えた小型ダモクレスは、放置されていたガスコンロに近づいていく。
 コンロの上に飛び乗ったダモクレスは、手足を伸ばしてそれを改造し始めた。
「カーセーット……コンロォォォ!」
 やがて、店内に咆哮が響く。
 人間よりもいくらか大きいほどのサイズとなったコンロには、細長い手足が生えていた。
 前面についていた2つのつまみが、まるでにらみつける目のような形となっている。
 先端だけが赤くなった、青い炎を頭上で燃えていた。
 勢いよく燃え盛る炎から、無数の炎の塊が飛び出す。
 閉ざされた扉を焼くと、ダモクレスは店から出て、獲物を求めて街へと歩き出した。

●カセットコンロを止めろ!
 集まった者たちに、有賀・真理音(機械仕掛けの巫術士・en0225)は挨拶もそこそこに語り始めた。
「あのね、放置されていたカセットコンロがダモクレスになって暴れだすみたいなんだ!」
 廃棄された家電がダモクレス化する事件は、今のところ尽きる様子を見せない。それだけ捨てられる家電が多いということかもしれない。
「今のうちなら、被害が出る前に阻止することが可能なんだって。でも、もし放っておいたら、たくさんの人が殺されちゃう」
 そうならないよう力を貸して欲しいと真理音は告げた。
 横に控えていた石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)が、改めて詳しく事件について語り始めた。
 現場は北海道のとある繁華街の端だという。
「カセットコンロは閉店になった鍋料理屋で放置されていたようです」
 もう営業していないので当然だが、店内に人はいない。
 もっとも、店は狭いので、戦場が外まで広がるのは避けられないだろう。
 付近の住民の避難は警察が行ってくれるが、ケルベロスたちも巻き込まれそうな人がいれば呼びかけるなどしたほうがいいかもしれない。
「敵は人間よりも大きなコンロに手足が生えた姿をしています」
 コンロには常に火が燃えており、そこから炎の塊を飛ばして攻撃することが可能だ。
「遠距離に飛ばして単体攻撃したり、自分の周囲に炎を撒き散らして範囲攻撃を行うことができるようです」
 いずれも喰らった者を炎上させる効果がある。
 また、グラビティで作り出したカセットボンベを交換することで、自らを回復することも可能だ。火力をアップする効果もある。
 へリオライダーは説明を終えた。
「カセットコンロはあったかい食べ物を作るためにあるんだから、人を傷つけさせたりしちゃダメだよね!」
 真理音が告げる。
「無事に片付いたら、帰りにコンロで料理を出してるお店とか寄るのもいいかも。がんばろうね!」


参加者
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)
リィンハルト・アデナウアー(燦雨の一雫・e04723)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
尾神・秋津彦(走狗・e18742)
逸見・響(未だ沈まずや・e43374)
潮・煉児(暗闇と地獄の使者・e44282)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)

■リプレイ

●寒い季節を燃やす敵
 ヘリオンから降り立ったケルベロスたちは、寒い北海道の町を移動していた。
 避難活動はまだ始まっていなかったが、警察には連絡しているのですでにこちらに向かっているはずだ。
「カセットコンロ、ですか」
 如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)は不思議そうに呟いた。
「不法投棄は現代の人達が犯す典型的な悪い事ですね。気軽にいらないから捨てるんでしょうが」
「壊れた機器の処分は閉店時にきちんとして欲しいもんだが」
 潮・煉児(暗闇と地獄の使者・e44282)が眉を寄せる。
「こうなったなら仕方ない。こっちできっちり処分させて貰おう」
「ええ。とりあえず、火事で大変な事になる前になんとかしませんとね」
 青い薔薇を髪に咲かせた彼女は、頑丈そうなドラゴニアンの青年へ同意する。
 目的の店以外にも鍋や温かいものを売りにしている店が並んでいる。
「寒くなってきたしお鍋の美味しい季節だからね」
 逸見・響(未だ沈まずや・e43374)がクールに言った。
「今の時期が一番お鍋がおいしいよねぇ。でも最近はお鍋のお店でもカセットコンロって見かけないかも」
 柔らかく笑って、リィンハルト・アデナウアー(燦雨の一雫・e04723)が言う。
「そうかもね~。私、遠赤外線ロースターやIHコンロのダモクレスとは戦ったことがあるから、時代を遡ってるね~」
 戦いが待ちきれない様子で葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)が言った。
 とはいえ、近くにいる人々に避難するよう告げながら移動することは忘れていない。他の者たちも一般人に警察の誘導に従うよう声をかけていた。
「置いてかれちゃったのはかわいそうだけど悪さはだめだよね!」
「うん、いつものようにささっと倒しちゃおうね~」
 リィンハルトの言葉に、気楽な様子で静夏も頷く。
「あった! ダモクレスがいるのはあの店だよ」
 閉店を知らせる紙が貼られた扉を、有賀・真理音(機械仕掛けの巫術士・en0225)が指差した。
 店内はまだ静かなようだ。様子をうかがいながら立ち入り禁止のテープを周囲にはり、さらにリィンハルトが殺気の結界を作り出す。
 扉の向こうで物音が聞こえた。
 ケルベロスたちは扉を勢いよく開けた。シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)が叫ぶ。
「太陽の騎士シヴィル・カジャス、ここに見参!」
 店のなかにいた巨大なカセットコンロが振り向く。
「……寒い季節だからと悠長に出迎えたいのは山々だが、明らかに温かいを通り越して火葬になることは火を見るより明らかだな。…火も見るが」
 威嚇するダモクレスを見据えて、祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)が呟く。
「炎を出して荒れ狂うコンロダモクレス――珍妙なようで怖ろしい相手ですな」
 座敷席の跡に、尾神・秋津彦(走狗・e18742)が軽やかに飛び乗る。
「乾燥してきたこの時期に大火事など起こさせはしませぬぞ!」
 大太刀を構えて、少年剣士がダモクレスへと告げる。
 他のケルベロスたちも、それぞれに得物を構えていた。

●燃え上がるコンロ
 ケルベロスたちが動き出そうとした瞬間、炎が店内に広がった。
 イミナは扉を背にした位置に立ち、弓を手にしたまま身をかばう。
 爆風が彼女の、意外とスタイルのいい体を扉に押し付ける。
「外に出たら……祟る」
 警察による誘導は始まっているはずだが、なるべく店内で戦いたいとケルベロスたちは考えていた。仲間たちも熱に耐えながら敵を包囲しようとしている。
 シヴィルが即座に光の矢を放ち、秋津彦が刀を振り下ろす。
 妖精弓を構えて、イミナは祟るのではなく祝福の矢をシヴィルへ飛ばした。
 他のケルベロスたちも攻撃や支援の技を放ち、半分以上が命中した。が、まだダモクレスを倒すには遠い。
 バーナーヘッドから火の玉が飛び出して秋津彦に襲いかかる。
 静夏が秋津彦をかばって射線に割り込んだ。
「どうせなら最初から私を狙ってくれていいんだよ?」
 攻撃を誘って微笑む彼女の足元には、鎖で作られた結界が守っている。その下には、星座の結界も描かれて炎に耐える力を与えていた。
 鎖は沙耶の持つ時計から伸びたものだ。
 沙耶は炎を避けて反撃に移ろうとする仲間たちを、後方から支援していた。
「信念を貫く為の力を!!」
 鎖の結界で守りを固めた後は、さらに意志を貫くための力を与える。
 静夏のように戦いを楽しむところまではいかないが、自ら戦いの場に身を置くほうが気が楽だ。誰かを戦いへと送り出すのに比べれば。
 コミカルな外見に反して強力な敵の攻撃を受けた仲間たちへ、沙耶は支援を続ける。
 沙耶を含めた後衛にも、響がごぼうとじゃが芋を輝かせて果実を産み出し、炎に耐える力を与えてくれた。
「火には水、って奴だな。少し大人しくしてもらう」
 煉児が混沌の水で作った鞭で敵を打ちすえた。水は蛇と化して敵を縛り上げる。
 ダモクレスは動きも遅くない。
「とりあえず、動きを止めなきゃね!」
 真理音が狭い店の中、狙いすました動きで高速の突撃を仕掛けて動きを阻害する。
「うむ、その通りだな! 今回の私はサポート役、しっかり足止めを務めるとしよう!」
 シヴィルは少女の言葉に同意すると、古代語魔法の詠唱を始めた。
 先ほどの真理音の攻撃や、シヴィル自身がしかけた竜砲弾が敵の動きを鈍らせているが、まだ足りない。
 大きく広げたオラトリオの翼が光を放つ。
「悪いが、貫かせてもらおう!」
 羽に似た形をした光の矢が確実にダモクレスの細い足を貫き、足止めの効果を加速させた。
「足止めすれば皆の攻撃が当たりやすくなるし、致命的な場所に当たる可能性も増えるからな。火事になる前に決着をつけるためにも全力を尽くすとしよう!」
 胸を張って告げると、太陽をモチーフにした鎧が炎を照り返して輝いた。
 煉児も重力を帯びた飛び蹴りで敵の動きを鈍らせるのに協力している。
 店の壁が粉砕されて、戦場が外へと移ったのは戦いが始まってから数分ほどしてからだった。
 秋津彦は外へと歩き出したダモクレスを追って飛び出した。
「是非もなし。筑波峰が狗賓の兵法、ご覧に入れますぞ」
 飛び出した反動を使って、店のひさしへと跳躍する。
 吼丸を肩に担いで、そのまま電柱へと飛び移った。
 避難は順調で、周囲にもう人影はない。街中を山に見立てて存分に戦うことができる。
「これなるは黄泉の穢れ。災禍はここより生じる――禍津陽、解放」
 大太刀に穢れをまとわせる。
 敵の真上により、不可避の呪いをもたらす幽冥の剣が襲いかかり、深々と切り裂いた。
「……そこが目……で良かったか? ……視界があるか判断し兼ねるが、この貌を見ろ」
 移動経路をふさぎながら、イミナの呪いがダモクレスを捉える。
「コンロで火を通すべきものは新鮮な野菜だよ……建物や人間じゃない」
 さらに響が無表情に突き出したじゃが芋から芽が伸びて、敵を縛り上げる。
 外に出たからと言って、自由にさせるつもりなど誰にもなかった。

●燃え尽きるとき
 屋外へと出たダモクレスは周囲を見渡すと、燃料であるボンベを虚空から取り出して体にセット。
 バーナーから上がる炎が青く変わり、高々と燃え上がる。
 だが、火力が上がることは予知でわかっている。
 祝福を受けたシヴィルの竜砲弾がまた敵を打った。
「どのくらい火力があがったか確かめたい気もするけどね……」
 静夏は弾を追いかけてダモクレスへ接近した。
「残念だけど、鎮火させてもらうよ。グラビティブレイク!」
 金色の紋様が刻まれた巨大斧に、地球人が持つ豊富なグラビティを込める。
 熱の中へ迷いなく踏み込んだ静夏は、大きな胸を揺らしながら体全体を使って斧を敵に叩きつけた。
 燃え盛る炎が斧の一撃によって弱まる。
 その後も時折、ダモクレスは回復と火力の強化を計ったが、ケルベロスたちはけしてそれを許さなかった。
 また、敵の動きを縛ることも忘れない。
「……災厄の炎を撒き散らす前に、この場で縫い留めてしまおう。……コンロは自発的に移動するものではないのだ。……祟る祟る祟る祟祟祟……」
 ダモクレスを道路に縫い止める勢いで、イミナの杭打ちが敵へ突き刺さる。
 リィンハルトのグレイブも雷をまとって突き刺さった。
 響は自分の得意分野である雷の魔法を発動させる。
「カセットコンロと言えど流石にダモクレスなら爆発しないだろう……」
 攻性植物でなければ鍋にも使えそうなごぼうを向けると、途切れることのない雷撃が幾度も敵を打つ。
 煉児が操る混沌の水も敵をとらえていた。
 反撃に移ろうとしたダモクレスの炎が一瞬消え、動きが止まった。
 雷撃による攻撃が敵のどこかをショートさせたのか。
 目であるはずのつまみをいじって再び火をつけ直すダモクレスに炎のオーラをまとった静夏も接近した。
「暑い……熱い……真夏の一撃! それにしてもあついね……」
 汗で長い髪を肌に貼りつかせながら放つ灼熱の掌底が、ダモクレスをさらに麻痺させた。
 やがて、攻撃を受け続けたカセットコンロはぼろぼろになっていた。
 だが炎だけは衰えない。
 黄金の果実や星座の結界と、沙耶の回復が防衛役である静夏やイミナ、ビハインドの蝕影鬼の炎を消しているが、それでも延焼する炎を完全に消しきれなくなってきた。
 前衛たちに炎がまた撒き散らされる。
 リィンハルトは手のひらを上に向けて、天を仰いだ。
「癒しの惠雨、その一雫、ここに」
 雨の雫が降り注ぐ。
 無数の粒は青年の手のひらで大きな一雫となる。
 炎に包まれているイミナへと雫を飛ばすと、雨滴がその炎を消した。
「勝手に燃え広がっていくから、気をつけなきゃね」
「そうだな……熱すぎて、思わず祟るところだった。火が消えても祟るが」
 淡々と言いながら彼女は敵を見据えた。
「こちらも、まとめて回復します」
 静かな声で告げて、沙耶のオーロラも静夏や蝕影鬼の炎を弱める。
「あと一息、がんばろう!」
 真理音の腕が回転して、敵をの外装を引き裂いた。
 反撃しようとした敵の炎がまた一瞬止まる。
「うむ! これ以上街を燃やさせるわけにはいかんからな!」
 力強いシヴィルの叫びと共に、光の矢が外装の傷を広げる。
 秋津彦の呪いを込めた刃と、イミナの矢が、見惚れるほどの美しさで敵を切り裂き、貫く。
「スカルブレイカー!」
 静夏の大斧が敵をたち割ったかと思うと、リィンハルトが影から音もなく星座の剣で切り裂く。
 無言で接近した響が痛烈な一撃で敵の装甲をまた砕いた。沙耶も好機と見て氷結の弾丸を放っている。
「さて、処分するなら、解体しないと駄目か」
 煉児はチェーンソー剣を構えると、後衛から一気に接近した。
 コンロの割れ目に高速回転する刃が突き刺さり、内部の部品を砕く。
 ドラゴニアンの膂力が縦横に敵を断ち、ついにコンロの炎は完全に消えさった。

●寒い日に温かい鍋料理
 戦いは終わり、ケルベロスたちは手早く周囲の片付けとヒールを終わらせた。
「さて……尾神殿の希望は土鍋だったな。さあ、みんなで食べに行くとしよう」
「はい! いざ北海道の旨味を味わい付くしますぞ!」
 シヴィルの言葉に、秋津彦が力を込めて応じる。
 幸いここは繁華街だ。鍋を食べられる店はいくらでもある。
「……家に帰ったら鍋もいいかもしれない」
 他の者たちも誘って歩いていくシヴィルたちを見て、イミナも呟いた。
「個人的には、土鍋はきりたんぽの気分なのだが……あれは、どこの地方の食材だっただろうか? まあ、せっかくの北海道だ。ここは無難に蟹の鍋料理の店でも探すとするか」
「どこだったっけ。いつか、きりたんぽの地方にも行ってみたいねっ」
 思案するシヴィルに真理音が言った。
 ともあれ、ここは北海道だ。やはり蟹を食べに行こうと、ケルベロスたちは歩き出す。
 スマートフォンで検索し、やがて良さそうな店が見つかった。
 2つ並べたテーブルに、それぞれコンロが乗っている。
 野菜と一緒に蟹が煮える、いい匂いが漂っている。
 苦労して殻から外した蟹の足を一口食べて、響が無言のままプルプルと震えた。
 熱かったらしい。
「大丈夫ですか?」
 沙耶の問いかけに、彼女は首を上下に振った。
「芋煮以外の鍋も悪くないね」
 冷ましながらゆっくりと、響は食べ始める。
「と、有賀もしっかり食わんとな。何が食いたい?」
 煉児が鍋の中を覗き込んでいる真理音に問いかけた。
 さりげなく皿を取って、取り分けてやる。
「ええと……蟹が食べたいんだけど、殻の取り方がよくわかんない!」
 ちょっと迷ってから、力強く彼女は応えた。
「なるほど。確かに、初めて食べるなら難しいかもしれんな」
「うん。でもきっと殻付きのままのほうが美味しいから、こんな風にしてるんだよね」
 興味深そうに真理音は皿の中の蟹足をながめている。
「その通りでありますな。殻がついていると蟹の出汁が出て美味なのでありますよ。できれば蟹だけでなく、他の海鮮やジンギスカンなども堪能したいものでありますなあ」
 成長期の健啖ぶりを披露しながら秋津彦が言った。
 残り物でも文句を言わずに食べる煉児だが、若者が多い今日はあまり活躍の場がないのかもしれない。
「おっと、頼まれてたお土産も買っていきませんと……うーん、もう数日くらい滞在していきたいですぞ!」
 狼の尻尾をテーブルの下でパタパタさせながら、秋津彦が言った。
 リィンハルトは大切な家族である楪・熾月と並んで座っていた。
「お疲れさま、リィン」
「ありがとうしーちゃん。寒くなってきた今の時期ってお鍋最高だよね! でもでも僕、蟹鍋って食べたことないかもっ」
 にこにこと笑っているのはこれまでと同様だが、家族と共に鍋を囲んでいるからか、よりいっそう楽しそうに見える。
「うん、楽しみだね。だって絶対おいしいもの」
 そんなリィンハルトに、熾月も表情を緩めていた。
「帰ったら他の家族にも教えてあげなきゃね♪」
「ん、そうだね。帰ったらお留守番の子達にも教えてあげよ。どうせなら一緒に鍋もいいかもね。もうすっかり寒い時期だから」
 この場にいない家族のことも思い出し、2人は笑顔を交わしあう。
「きっと皆で囲む蟹鍋は美味しくて楽しくて、しあわせいっぱいだよね。今日は食いしん坊担当がお留守番だし、俺が担当しちゃおうかな~」
 熾月がわざと勢いよく食べ始める。
「体ぽかぽか、心もぽかぽかで最高だねぇ」
 そんな彼の横顔をながめて、リィンハルトもまた、蟹をつついて微笑んだ。
「お鍋は美味しいし、なにより体が温まるよね」
「そうだな。私は寒さに耐える防具を装備しているが、皆は寒かっただろう」
 戦っているときとはまた別の微笑みを見せている静夏へと、シヴィルが言う。
 もう冬と言ってもいいほど寒い晩秋の北海道。
 だが、ダモクレスの攻撃とは異なる、体の内側から温まる心地よさを皆は感じていた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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